●197に13コマという時間設定も,本学別科生の履修要件を踏まえたものである。別科生には,自らの小林 ミナ1.はじめに2.日本語授業としての「2A」「2B」小林ミナ/「実践研究」をスキルトレーニングで終わらせない工夫エッセイ&インタビュー/日々こもごも◆◆本稿で取りあげる日本語授業は,筆者である小林が2006-2007年度に日本語教育研究センター(以下,「センター」)で担当した「日本語2A」「日本語2B」(以下,「2A」「2B」)である。筆者は,コーディネーター,および,授業担当者として「2A」「2B」に参画していた。「2A」「2B」は,大学院日本語教育研究科(以下,「日研」)において筆者が担当する「日本語教育実践研究(5)」(以下,「実践(5)」)における実習科目でもあった。すなわち,本稿で取りあげる「2A」「2B」は,センターの日本語科目であると同時に日研の実習科目でもあるという,二つの側面を持っていることになる。本稿では,このような「2A」「2B」における実践を,日本語教育における専門家養成という視点から論じたい。「2A」は,週に13コマ開講される集中コースで,複数名の担当者がチームを組んで担当する。科目名の「2」はレベルを意味しており,いわゆる初級後半を指す。「2B」も,同じくチームティーチングによる初級後半の集中コースであるが,週に10コマ開講される点が,「2A」と異なる。「2A」も「2B」も,文法シラバスの初級教科書をメインテキストに据え,メインテキストに沿った文法授業の他に,会話,作文,漢字などの授業が設けられていた。このように,「2A」と「2B」は,どちらも非常に一般的な初級コースといってよいが,想定している学習者群が異なる。「2A」は,別科専修課程の学生(以下,「別科生」)を主な対象とする。週留学生活において,日本語学習を最優先に位置づける者が多く,授業時間以外に予習や復習,宿題などに取り組むことにも熱心である。他方,「2B」は,研究生や大学院生を主な対象とする。研究生や大学院生には,日本語学習よりも,学会参加やフィールドワークといった研究活動を優先せざるを得ない者も珍しくない。学習者群の違いは,コースデザインにも影響を及ぼす。よって,13コマか10コマかといった,教室内での閉じられた視点ではなく,「留学生活における日本語学習の位置づけ」という俯瞰的な視点から,それぞれのコースをデザインしていくことが求められている。「実践研究」をスキルトレーニングで終わらせない工夫―センターと日研の連携による日本語教育システム構築を目指して―
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