●195沈佳琦科目名:総合日本語(標準)5実施年度・学期:2011年度・春学期クラス人数:5人「総合日本語(標準)5」は,中級の終わりから上級の学習者を対象とした週3コマのクラスである。「新聞など生の文章をのせた教科書を使って,文型・語彙・表現・漢字などを学習しながら本文を読解した後,本文に関連したテーマについて話し合い,最後に作文を書く。そのような活動を繰り返しながら,日本語によるコミュニケーション能力を伸ばす」のが授業の狙いである。(「総合日本語(標準)5」シラバスより)月曜日の1コマを担当していた頃,テキストの内容は社会的な背景に関連し,それについての知識を要する抽象的なものが多く,学生には十分に理解できないことが多かったと感じた。しかし,スケジュール上で時間的な余裕があまりなかったため,テキスト以外の内容に触れる機会はなかなかなかった。2011年度春学期から,木曜日に2コマの授業を担当することになった。時間的に余裕が出てきたため,授業に補助教材などを取り入れようと思った。震災の関係で,学習者数が通常の半数に減少した。また積極的に発言する学習者が少ないため,授業中の会話があまり活発にならなかった。話し合いがより活発に行われるように,話題になる材料をより多く提供しようと考えた。具体的なイメージを掴むことができ,かつ退屈にならないように,雑誌や記事など読むことを中心とした資料よりも映像などを積極的に盛り込もうと心がけた。そこで,テキストの内容に合わせて,YouTubeなどで映像や関連ニュースを探した。「お見合い」についての課では,YouTubeで見つけた「婚活最前線 結婚できない男女」(http://www.youtube.com/watch?v=A8zf8i1ael8)というドキュメンタリーを見せた。テキストに出てきた「親同士のお見合いパーティー」の現場を実際に目で確認でき,「結婚できない若者」たちの生の声を聞くことができた。中には,昭和初期から経済成長期までの日本社会の結婚事情についてまとめた映像もあって,テキストでは触れられていなかった歴史的背景を紹介することもできた。これらの映像に関しては,「おもしろい」「いい」との声があった。映像で紹介されたデータや内容はその後書いた作文にも引用されたことから,学生たちにとっては印象に残った内容だったと言えよう。ただ,それらの補足として提供した資料によって,新たな意見が生まれたり,会話が活性化することはなかった。コミュニケーションを活発化できなかった理由として,導入の順番に要因があるのではないかと考えた。沈佳琦/学習者がより積極的に発言できるような授業作りエッセイ&インタビュー/日々こもごも◆◆学習者がより積極的に発言できるような授業作り―補助教材使用を通して―
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