早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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AB●1793.「協働リフレクション」の試みを終えて表2  4名のリフレクションメモこれまで担当者間において,それぞれの授業に対する考えの擦り合わせや,その時点で起こっている問題について主に話し合ってきたが,解決の糸口はなかなか見えなかった。そのような状況の中で行ったのがこのリフレクションだった。目の前のことのみを見て対処するのではなく,一度シラバスに立ち返ってコース全体を俯瞰した上で,改めて問題を考えてみるという視点からの話し合いが必要であることを再認識した。そのような視点を持ち帰り,一方の担当者と話し合った結果,今後どのように授業を行っていくべきかが明確になり,また担当者間におけるコミュニケーションを重ねるうちに,相手がどのような考えを持ち,どのようにクラスに関わっているのかが見え,この先どのようなクラス運営をしていけばいいのかという互いの共通理解を得ることができた。Aさんの話を聞き,現在担当の授業よりも,それ以前に担当した授業での類似した経験や出来事を反芻しながら質問していた。その質問は,相違点と共通点を探りながら,自分の授業について再度捉えなおしていくことになった。特に,Aさんの話から,学習者に対する言動,デザイン,ゴールと活動との関係性,現在の授業の状況を振り返ることとなった。現在担当している授業は,Aさんのコースと,流れは似ているがコースの目標とコンセプトが異なり,このような授業の多様性や面白味を再認識した。今井なをみ,他/教師同士による協働リフレクションの試みエッセイ&インタビュー/センター最前線 A :今,改めて考えてみて,私もどうなの?って,思ってしまった……。 C :教師は授業で迷えない。こういう流れの授業ですね?と,確認しながら進める。つまり,教師には学生をここに連れて行くという決意が必要だと思います。特にこのAさんのコースでは……。 A :そうですね。でも,そのエッセイ自体をどう書けばいいかとか,ということが目的ではないんです。内容について話し合いをして,その中からまた新たなポイントとか,直したほうがいいとか,足したほうがいいとか思ったら自分で変える。あくまでも,自分の意志で変える。クラスでは,それを繰り返し働きかけているんです。でも,Lさんのような学生も出るということですよね……。 C :ええ。Lさんには,それ以外のゴールや方法,Lさんなりのプロセスを作ることも考えられると思います。 D :でも,その一方で教室は一つのコミュニティですから,クラス全体を対象とした運営とLさんへの対応とのギャップが埋められるかどうか……。 B :たしかに……。クラスをどういう場として教師が考えるかという点ですね(略)。 私たちは,Lさんの問題とこのコースの枠組みという観点から見てきましたが,それを手がかりに,Lさんともまず話し合うというか,よく聴き合うことが必要では? 時間と手間がかかるかもしれませんが。でも,そうした経験が基になって,Aさんの授業になると思うんです。 A :こうして考えると,授業のコンセプトと,自分の担当している授業の運営方針の決定や,それを共有している一方の担当者との話し合い,教室での学生とのやりとり……,自分自身,あらためて真剣に考えてみたかというところに行きついてしまいますね。グループ対話終了時に,4名が各自リフレクションメモとして,気づきや意識したことを記述した。そのうち,Aの話題や問題に関連する部分を抜粋し,掲載する。

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