●178のLが過去のL自身の変遷を肯定し,それを確認しようとしているということではないか。」と語っLを肯定するAの意図を読み解こうとする対話が続いた。そして,B,C,Dは,これまでに経験Lへの対応を見出そうとして,模索と対話が続いた。2.4.4 教師が想定している「授業活動」と,Lのエッセイの状況 B :もう一度,このコースの活動の流れについて確認したいんですが,このコースは,学生が自分で決めたテーマのエッセイを書く中で,自分を再認識することが目標で,そのプロセスとして,クラスのメンバーとエッセイの内容を検討する話し合いを行い,それを反映させた推敲を繰り返してエッセイの形にする,ということですね? A :はい。授業では話し合いをします。方法は,グループの場合もペアの場合もありますけど。 C :教室活動と並行して,エッセイを書いていくわけですか。 A :はい。 C :教室での話し合いの活動によって,エッセイの質がだんだん良くなっていく? A :そういうタイプの学生もいます。話し合いについて,同じことの繰り返しだといったLさんは,実はほとんどエッセイが変わらない学生なんですよね。 C :Lさんの場合は,クラスの話し合いがエッセイに反映されないということですか。 A :ええ,Lさんの場合は,最初からほとんど変わっていません。話し合いでは意欲的で,むしろ,話し合いの牽引役になることもあるし,一見,積極的に参加しているようですが,エッセイには反映されないですね。B/D:うーむ。 C :推敲を繰り返して,意見を取り入れて,エッセイが違っていく,というようなことは? A :そうした変化が見られる学生が大半ですが,Lさんに関しては,今のところ変化は見られませんね。 C :推敲プロセスを取り入れたコースにも関わらず,学生自身も,変わらない自分を認識してしまっているし,Lさんは,書くことと授業活動が,関連付けられていないわけですね。では,話し合いは,Lさんにとって,どんな意味があるのでしょうか。このCの問いかけ後,Aは学生Lの背景を説明し,「彼にとって過去について書くことは,現在た。B,C,Dは,教室におけるLの振る舞いや話し合いへの構えに対するAの解釈や見解を聞き,した類似の状況や,同じような学生を担当したこと等を紹介し,Aはこれを聞きながら授業運営と2.4.5 Lの問題を通して考えた教師自身によるコースの意義の問い直し B :この授業の目的と目標,そして,この週の目標は「自分を整理して,考えを深める」とシラバスに書いてありますが,Aさんは,Lさんに,このクラスの目標設定に対して,どう思うか,直接聞きましたか? A :それは聞いてないです。でも,たぶん,まぁ……その,直接ではないですけれども,シラバスに書いてあるとおりには,了解してるんじゃないでしょうか。 B :ああ……。(略)じゃ,Aさん自身はどうですか。変化や深めることを書くことに反映させなくても,いいと思っている?(略)シラバス概要とAさんが考える授業とずれがあるということ?早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/174-181
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