●176第7週までの目標は,過去のことを振り返って自分とはどういう人間かということを認識す早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/174-181どう捉え返すのかという教師の授業運営,そして状況に対する観点に帰着した。2.4.1 ティームティーチング担当者間の視点の相違 A :私の担当クラスは,教員2名によるティームティーチングで,週2回3コマのうち,私は1コマの担当です。同僚との引き継ぎと連絡は,主に授業記録です。実は先日,学生Lから「毎回,同じことの繰り返しで意味がない」という意見があったとの報告を受けました。 B :Aさんの授業の目的を確認したいんですが……。 A :自分を見つめ直すことがコースのコンセプトになっています。 B :毎回の授業をデザインする際にもそれが中心になるのですか。 A :はい。シラバスは流れの大枠を示していますが,授業で何をするか考えるのは担当者です。別のことをする時もあれば,同じ話し合いを引き継いで,続けることもあります。 B :同じ話し合いをするといっても,どこに焦点をあてるか,誰を中心に回すとか……。担当者同士で,話し合わないのですか。 A :そういうことを密に話し合いたいとは思っていますが,授業に対する視点や取り組み方の違いからか,深い話し合いまでにはなかなか至らないことが多いです。 D :というのは? A :私なりの分析ですが,もう一名の担当者は活動の形を大切にしているのかもしれません。予めその日の活動の内容を詳細に考え,丁寧に準備をした上で,それを遂行することに重きを置いているようです。私は,学生の様子を見て,動くことに関心があります。その日に行う活動の大枠は考えますが,教室ではその場の様子を見て,動くことが多いです。そうした取り組み方の違いからか,担当者と話が噛み合っていないようなことが時々あるように感じます。 C :私のコースは3人で担当しているのですが,学生には,担当者による違いは個性として捉えてもらうように,意識して働きかけていますね。 A :担当者はそれぞれ違って当然だと思うのですが,その調整に苦心したりもします。 B :確かに。でも,一つのコースに複数の教師がいることは,メリットが大きいと思うんです。 C :それぞれの教師の個性が出て,違いがあるということは,前提では? 私自身も,他の担当者とは,見ているところも,対応も違うと思ってやっています。 A :その点についても,担当者間で,視点の違いを認識することがよくあります。普段は,お互いに授業記録を確認し合っているわけですが,授業について打ち合わせの機会を持って,これからどうしようかみたいな話を担当者間でしていても,それぞれ見ている部分が違うことが分かります。2.4.2 教師が考える「書く」ことの意味とゴール B :少し,観点を変えてみませんか。4人のコースの共通点は,教室活動を通して「書いたもの」をプロダクツ(成果物)とする点ですね。書くことの意味から,話してみましょうか? A :私が担当するコースの目的は(表1参照),自分を見つめることです。コース前半の第2週〜ることです。この期間,授業活動での話し合いを通して行う推敲は,直接の目的ではなく,手段です。つまり,書くことは,授業目的ではないんです。
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