●175・ エッセイ①「いままでの私」→過去から現在までの自分の行動や身に起こった出来事を振り返り,それ・ エッセイ②「いま(これから)の私」→過去を踏まえ,なぜ日本へ来るに至ったのか,ここに自分がいる意味を考えること。また留学の意義と今後において,自分がどのような人間になりたいかということについても考える。1)自分が今ここにいる意味を振り返り,見つめ直すこと2)参加者間で表現し合うことで,これまでの自分を整理し,自身の考えを深めること2.2 Aの授業概要Aが担当するコースは,2011年9月から2012年2月に渡って開講され,総授業時間数は全67.5時間(水曜1–2時限,金曜1時限/週3コマ(90分)×15週)である。これを2名のティームティーチングで実施し,うちAは毎週金曜日を担当している。また,履修者は8名,CJL6〜7レベルの学生である。2.3 Aの授業の状況 ―課題の出発点―第1回目のグループ対話の時点で,Aが担当するクラスはすでに第5週目が終わり,エッセイ①(表1内参照)の完成に向けて,第3稿の推敲を行っている時期だった。しかしAは,これまでの授業が何となく軌道に乗っていないと感じていた。その理由として,授業運営に対するもう一名の担当者との取り組み方の相違をはじめ,自身の授業においても検討すべき課題にどのように対処すればいいかを頻繁に考えるようになっていたことが挙げられる。第2回目のグループ対話の時点では,第6週目を経過したところで,一方の担当者の授業報告に「毎回同じことを繰り返すだけで,意味がない」という学生(以下,L)の発言が記載されていたことが話題として取り上げられた。Aはこの文面から,Lの発言は,その日の授業に対するものだけではなく,コース全体に向けられたものであるかもしれないと感じていた。2.4 リフレクションを通して変化したAの問題意識Aの視点は,当初はティームを組む担当者間における授業の取り組み方の相違に据えられていたが,学生Lの発言に対する両担当者の対応について語る過程で,Lが抱える問題の意味の問い直しへと移行していく。一方,B,C,Dは,Aの話題から,自分自身の経験を振り返りながら,担当してきた授業の現状や運営の理念について言語化するプロセスをたどった。それを受け,Aは,B,C,Dとの対話とそのリフレクションを通して多様な背景を持つ学習者を抱えるCJLの日本語教育現場において,学生の実態に合った学びの場を提供する上での難しさを具体的に語った。その後Aは,授業のコンセプトを受け入れようとしないLという学生の対応について考えたことをきっかけに,コース設計自体を見直すことを始めた。結果的に教師が対応や方針を決める際,何を基軸に今井なをみ,他/教師同士による協働リフレクションの試みエッセイ&インタビュー/センター最前線表1 Aの担当クラスの授業概要4)□クラス活動の概要と目的この授業では参加者(教師・学習者)間で話し合いを行いながら,その内容を反映させた2本のエッセイをまとめます。テーマは以下のとおりです。を通して自分がどのような人間なのかを捉える。□クラスの到達目標□授業計画1週目: 2〜7週目: エッセイ①テーマ選定,第1稿執筆と第2稿〜5稿の推敲・話し合い8週目: 過去と現在をつなぐ活動,「いま(これから)の私」について考える9〜14週目: エッセイ②テーマ選定,第1稿執筆と第2稿〜5稿の推敲・話し合い15週目: オリエンテーション,自己紹介,「いままでの私」について考えるまとめと振り返り
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