●174今井 なをみ・佐藤 貴仁・古川 明子・村上 まさみ1.はじめに2.協働リフレクションの試み「活動型」担当者からの声早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/174-181筆者ら4名は,2011年秋学期,早稲田大学日本語教育センター(以下CJL)で,異なるコースを担当している1)。これまでこの4名は,互いの担当する授業すら知ることがなかったが,今回の機会を得て「教師自らが実施した実践を対象として研究すること」(以下「実践研究」)に対し,共通の疑問を抱いていることが分かった。それは,「実践研究」とは誰のために行い,誰に向けてどのように公開するのかという実践研究の意義・目的と,方法の議論である。「実践研究」は,研究対象とする実践をリフレクションすること2)を包含しており,教師自身の自己評価及び自主研修として意義ある行為だといえるだろう。しかし,研究として得られた知見の還元先という観点からみると,その公開先の多くは教育関係者であり,口頭発表,研究論文等に委ねることになる。つまり,知見を与えてくれたその実践―多くはその実践に参加した人たちによる―は,「実践研究」の公開時には既に過去となり,その射程から外れ,直接還元されることはない。さらに,表された知見は,ややもしたら自己完結に陥りがちで,公開先である教育関係者にすら理解しにくいこともある。そこで,筆者ら4名は,教師同士で,現在各自が担当している授業とその内容を公開し合い,その実践と並行しながら,リフレクションとグループ対話を行うことによって,各自の実践における課題に接近することを試みた。本稿では,この試みを異なる授業担当者同士による「協働リフレクション」と呼び,この試みから如何なる気づきや意識化が生じ,その結果,何が見いだせたのかを報告する。2.1 実施方法週1回×全4回,約6時間半3),4名でグループ対話を行った。その後,各自の気づきや意識したことを記述した,リフレクションメモを作成した。第1回では,4名各自の現在担当している授業の概要を紹介し,授業への取り組みや各自の課題をめぐって話し合った。第2回〜第4回では,話題提供者を決め,話題提供者が現在進行中の授業の状況と課題や問題を提供し,それをめぐってグループ対話を行った。回数を重ねるごとに,日本語教育の実践に対する互いの相違点や,各々の教室実践の認識や価値観を共有していくこととなった。本稿では紙幅の関係で,Aの話題提供とその後のプロセスに焦点を当てダイアローグ形式で記述する。教師同士による協働リフレクションの試み―異なる授業担当者間の対話と気づき―
元のページ ../index.html#176