早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●168鴻野 豊子・眞鍋 雅子・森元 桂子1.はじめに2.担当クラス(2011年春学期)の概要「活動型」担当者からの声早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/168-173活動型クラスを担当していると,学習者との間に溝やズレを感じ,戸惑うことが多い。このような担当者と学習者のズレとは一体何であり,どうして生まれるのだろうか。活動型クラスが始動した当時は,「担当者が作文を添削しない」「教えない」という新しいスタイルや具体的な授業経験の欠如に,学習者のみならず教師も戸惑いを覚え,時折,両者の不理解による対立や挫折が起こった。そのため,担当者らには,授業経験を積みながら試行錯誤と内省,改善を重ねてきた経緯があり,学習者側も,活動型クラスの目的やスタイルをある程度了解した上で選択する場合が増えたため,現在では,以前ほどクラスに対する根本的な理解のズレが問題視されることは少ないように見える。しかし,依然として,活動型クラスの担当者である執筆者3名は,授業の様々な局面で学習者との間にズレを実感している。そこで本稿では,活動型クラスを担当した際に,各担当者が感じたズレの事例を挙げ,話し合いを行い,ズレとは何であり,どう考えるべきかについてまとめてみることとした。鴻野:「インタラクティブ日本語2」2レベル   週3コマ×15週(1コマ90分),学習者数6名基礎的な日本語のコミュニケーションができるようになることを目的とする。テーマを決め,様々なインタラクティブな活動(ディスカッションする,インタビューする,レポートを書く,プレゼンテーションする)を通して自分の考えを深める。そして活動の中で日本語の語彙や文法,コミュニケーション・スキル等を学習する。眞鍋:「私にとって『魅力のある人』4」4レベル   週3コマ×15週(1コマ90分),学習者数3名 日本人ボランティア学生1名自分が今まで出会った人や憧れている人の中から魅力的だと思う人を選び,なぜその人に魅かれるのか,どんなところに魅かれるのかを考えクラスで発表しながらレポートにまとめていく。単なる情報収集ではなく,他の人とのやりとりを通して自分の考え方や価値観を見直す。活動の中で必要な日本語の語彙,文法,表現などを学習する。活動型クラスにおける担当者と学習者のズレについて

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