●1593.受講生からの反応<ケース教材例1:「クラスメートと……」のあらすじ><ケース教材例2:「親友がほしい」のあらすじ>毎回の講義の流れは以下の通りである。(1)各自ケースを読む,(2)各自ケースの内容理解確認のための質問に答える,(3)グループで(2)の答えを確認する,(4)グループで問題の分析と解決策を討論する,(5)クラス全体で(4)で討論したことを共有する,(6)翌週小レポートを提出する。2010年度春学期,不安を抱いたまま講義をスタートしたが,終わってみると,非常に活発な,時には,白熱した議論が展開し,筆者自身も受講生の意見に驚いたり,感心したりしながら,楽しい時間を過ごすことができた。学習者の日頃の反応や学期末に行なったアンケートでは,概ね肯定的な評価が得られている。例えば,ケース教材例1については,講義中に「こういう性格の人(Bさんのような人)っていますよね」というコメントが,ケース教材例2については,「先生,リアルすぎます」,「わたしはAさんです」といったコメントが得られた。また,2010年度春学期と2011年度秋学期に行なったアンケート(回答者26名)では,印象的だったケースを選び,その理由を書いてもらった(自由記述)。その結果,14名の受講生から「自分にも似たような経験がある」,「同じ問題があった」,「自分にも起こりそう」,「留学生に起こりそう」,「ありふれた問題」といった,同類の問題が自分にも起こり得る,または,既に起こっているといった当事者性や問題の日常性が理由として挙げられた。このことから,受講生がケース中の登場人物の立場に立って考え,感情移入しながら,議論に参加しているのではないかと推測できる。また,前述のアンケートで,「このクラスで学んだこと」を選択肢の中から選んでもらったところ,上位2項目は,「他の人の異なる考えや価値観」(22名),「人の意見を聞く力」(18名)であった。さらに,この質問で「その他」を選択し,その内容を記述してくれたものには「他人の立場に立って自分の問題に気づくこと」,「直接本人と本音で話し合うことが大切」,「柔軟に問題を解決することが必要」というコメントが得られた。2010年度春学期から,現在開講中の2011年度秋学期までに,受講生のフィードバック等からいくつかの改善を試みている。例えば,グループ分けを毎回ランダムにして,なるべく異なる人と討論できるようにした。また,2010年度秋学期からは受講生に書いてもらったケースで作成者本人宮□七湖/問題発見解決能力を伸ばすことを目指した日本語の授業ある科目で,ペアで発表をすることになったAさん。社交的でひそかに憧れていたBさんとペアを組むことに。しかし,何度か催促してもBさんは,なかなか準備を始めようとしない。ある日,Aさんはやっと昼食後に会う約束をした。Aさんは急いで食事を済ませて,Bさんを待ったが,Aさんが来たのは2時間後だった。Aさんは,ついカッとなって……夢だった1年間の短期留学をすることになったAさん。日本人の友だちを作りたいと,サークルに入ったり,積極的に飲み会に参加したりした。しかし,他人の噂話などくだらない話ばかりでつまらない。表面的なつきあいで,深い話ができる友だちができない。「なんで日本人はみんなバカ話ばかりしているのだろう」。Aさんの失望と焦りは募り,ついには自宅に引きこもってしまう。エッセイ&インタビュー/センター最前線
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