早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●143.わせだ日本語サポート早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/7-23図6 ポータルを介さないセルフ・アクセスとも予想される。しかし,或る時点における個人的学習環境を構築してしまえば,当然,ポータルへのアクセス回数は減る。当然のことだが,ポータルの利用回数の減少が,即,留学生支援システムの衰退を意味する訳ではない。留学生が自らの学びについて主体的に考え,相応しい日本語学習リソースに計画的にセルフ・アクセスして学習に取り組むことが自律的な学習だと考えるのなら,何も毎回ポータルを経由してから学習リソースへアクセスする必要なはい。図6は,留学生がポータルを経由することなく,学習リソースへ直接セルフ・アクセスしている様子を概念図化している。つまり,留学生は,学習リソースへアクセスするための既定の経路を辿るだけではなく,新たなアクセス経路を独自に確立したことになり,個人的学習環境をより整備し,自律的な学びを一歩前進させたとも言える。もちろん,この留学生が,次のステップの日本語学習について模索し,個人的学習環境を更新しようとする時には,再びポータルを訪れるかもしれない。その時に備えて,ポータルは常に開かれていなければならない。上で述べたことは,日本語学習に関してだけではなく,留学生活全般についても当てはまることである。留学生が新たな個人的修学環境を作るために新規の留学生サポートを必要とする時に備えて,留学生サポートへの入口となるポータルは,いつでも確実にアクセス可能な状態になければならない。支援ネットワークの総体である留学生支援システムと留学生との最初の接点となるポータルが不可欠であることは既に確認した。このポータルは,早稲田大学においては「わせだ日本語サポート」という形で具現化されている2)。問題や疑問を抱えた留学生が最初に訪れるポータルは,いつも決まった場所にあり,常に広く開かれ,誰でも躊躇なくアクセスできることが望ましい。わせだ日本語サポートも,留学生にとって,間口が広く,敷居が低い支援ポータルとしての運営を目指しつつ,体制を整備している途上である。以下においては,わせだ日本語サポートでピア・サポートを実践している支援スタッフの役割について,特に,ナビゲーター,アドバイザー,そして,日本語学習リソースとしての役目について

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