●156河内 千春日本語で「地球の問題」を考える5-61.なぜこのクラスを行なうことになったか2.意図 ねらい3.授業の流れ早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/156-157この科目は,2010年度春学期からテーマ科目として実施しており,毎回10人前後の学生が受講している。この科目について,講義要項には次のように書かれている。よりよい地球社会作りに参加するため,今,地球上で起こっているさまざまな問題(貧困・教育・人口・環境など)とその解決に向けての取り組みについて,ミレニアム開発目標を中心に,日本語でどのように表現されているかを知り,問題解決に向けて自分ができることを考え,日本語で表現する。以下,この科目(クラス)について詳しく見ていきたい。約20年前のことになるが,JICA研修センターでの日本語教育の仕事を通じて途上国に関心を持つようになり,途上国の子供たちの現状を知り,何か支援できることはないかと考えていた。たまたま新聞広告で国際NGOプラン(当時の名称はフォスター・プラン)を知り,支援を始めた1)。その後,途上国支援が「開発教育」という教育分野の一つであることを知り,ワークショップなどに参加してみた。そこで,「開発教育」とは異文化コミュニケーションの実践であることに気づき,日本語教育にも活かせるのではないかと思った2)。2007年度春学期に担当していた読解6レベルのクラスの中で,「開発教育」関連の教材の読解を取り入れてみた。学生たちからの反応がよかったので,その後は,ミレニアム開発目標を読解の中心とするようになった。2010年度からのテーマ科目として,上記内容の企画を提出し採用され,テーマ科目としてクラスを行なうことになったのである。このクラスは,5–6レベル,つまり,中級から上級へ橋渡しとなるレベルであり,一番必要なのは,語彙を増やすことであると考えられる。学生たちにとっての未知の内容を教えるのではなく,ある程度知っていることが日本語でどう表現されているのかを理解させることである。日本語で理解できるようになれば,日本語で考えることもできるようになるであろう。NGOの活動を紹介することもあるが,特定のNGOに参加してほしいというものではない。初めに,ミレニアム開発目標の8つの目標と達成状況の表などを示し,全体を把握させる。それ開発教育を取り入れた日本語クラス実践
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