早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●1511) 『みんなの日本語初級Ⅰ本冊』スリーエーネットワーク注 4) クラス担当者は,コーディネーターが2名,インストラクター非常勤が19名。6) 文部科学省による「国際化拠点整備事業(グローバル30)」を指す。国際化拠点大学を選び,8) 教員・学生の授業に関するあらゆるアクティビティ(オンデマンド授業の受講,教員からの川名恭子,他/初級日本語クラスにおける教師間シナジー特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文めには,このような教師間シナジーが重要であることを強く主張する。4-3 今後の課題と展望「日本語かきこ」は本来,東日本大震災の発生に伴う授業数の不足を補うために考案された活動であったが,その初めての試みにおいて教師が連携して情報を共有し,影響し合うことで教師間シナジーが生まれた。それによって様々なアイディアが集結し,「総合日本語(標準)1」にとっても,また担当した個々の教師にとっても,非常に有意義な活動になったと言える。だが,今後さらに良いものにしていくためには,本活動の主役である学生に焦点を当てた調査・研究が不可欠である。学生の意識や取り組みの実態が明らかになれば,教師と学生が「自由な発信の場」を構築し,コミュニケーション活動を共に行う上で有益な情報になると思われる。加えて,本活動の枠組みである書き込みシステム(Course N@vi のBBS)や,授業のFB方法などについてもさらなる検討と改善が必要である。最後に,「総合日本語(標準)1」という初級前半のクラスで,このような取り組みができたことに関して一言述べておく。本活動の目的は,学習者が「自分の伝えたいことを日本語で表現する機会を作る」ということにあった。言い換えれば,「日本語を使う自分」という存在を徐々に確立していくことでもある。日本語で書き込むことは,学習者が思ったことや考えたことを他者へと発信することであり,日本で生活する限り,必ず求められるコミュニケーションの一つである。このレベルには来日したばかりの学習者も多く,基礎となる日本語はもちろん,日本のルールや習慣などを身につけ,日本での生活に慣れるための重要な期間である。このような初級前半という早い段階で「日本語かきこ」という活動が実施されたことは大きな成果と言えるのではないだろうか。今後より一層,教師間の連携を強め,教師間シナジーを高める環境を作ることで,この活動をさらに有意義なものとしていきたい。2) 2010年時点で,早稲田大学における外国人留学生人数は3,535名。日本で最も留学生の受け入れが多い。3) 火曜日1・2限,金曜日1・2限,土曜日1限。5) 初級のクラスを受講する国際教養学部の学生は,主に,正規入学で4年間早稲田大学で学ぶ留学生(SP2)と,半年もしくは1年間の短期留学として学ぶ留学生(SP3)である。学生は1学期間に6単位の日本語を履修することになっている。重点的に財政支援をする委託事業。早稲田大学は留学生の受け入れ拠点となる大学として2009年に採択された。受け入れた留学生及びその所属を大学ではG30と呼んでいる。7) 別科とは,別科日本語専修課程の略で,本センターによって設置・運営されている,1年間の日本語集中学習プログラムである。別科生は1学期間に13もしくは14単位を履修することになっている。

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