早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●1483章では担当者一人ひとりの活動に対する意識と取り組みについて述べたが,本章では情報交換4章 考察早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/139-152図4 教師の目的意識の推移応がなく,一方通行の状態が続いていると感じていた。しかしランチ会において,実は自分の書き込みに対し学生達がよく反応していることや,その内容がきっかけでクラス内での会話が広がったというような様子が聞けたことで,モチベーションを下げることなく,書き込みを続けることができた。渡部も,開始前は楽しくなりそうだと期待していたものの,学生の消極的な様子に戸惑いを感じていた。しかしランチ会で,学生の消極的な様子は「課題」としての強い認識によるものだと理解し,納得することができた。またSNSのようなものが意図されていたと知り,FB担当者とより緊密に話をするようになり,自身の授業時にも,書き込みの内容を話題にすることにより,学生のモチベーションが少しでも上がることを期待した。ランチ会での情報共有を有意義に感じたクラス担当者は,その後も勉強会として定期的に情報交換を行い,「日本語かきこ」終了まで,細かい試行錯誤と工夫を重ねた。勉強会においては情報交換のみならず,活動の振り返りを共有し,来期の実践の構想を話し合った。4-1 「日本語かきこ」実践者としての一人ひとりの考察のきっかけとなったランチ会以降の担当者の変化について,それがどのようにして生まれ,どのようなものだったのか,図4と各担当者からのコメントに基づいて考察したい。各担当者は,それぞれが掲げる「日本語かきこ」に対する捉え方と学生の反応や学習状況とをすり合わせながら活動を開始した。しかしランチ会を機に自らの方向性を見直し,大きな方針転換を行ったのが田所と水上である。図4を見ると,田所は開始時点では練習重視であったが,自由な書

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