早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●1391章 背景と目的寄稿論文教室実践の新展開The Effects of Inter-teacher Synergy in Japanese Class for Beginners:早稲田大学日本語教育研究センターに設置されている「総合日本語(標準)1」は,『みんなの日本語初級Ⅰ1)』を主教材にしている初級前半のクラスである。近年の同大学における留学生数増加に伴い2),初級学習者数も増加しており,2011年度春学期実施の「総合日本語(標準)1」では,同じシラバスの下,9つのクラスが開講され,週に3回計7.5時間の授業が行われた3)。1つのクラスにつき2,3名のクラス担当者によるチームティーチングが行われている4)。学生数に関しては通常定員が14名と設定されているが,東日本大震災の影響で各クラス3名から5名ほどとなった。学生は,国際教養学部5),G306),別科7)などに所属しており,日本語を初めて学ぶ者も,母国で多少の日本語学習経験を持つ者もいる。「総合日本語(標準)1」のコース目標は,初級前半の主要な文型,語彙,文字を学習し,それらを用いて自分の経験や考え,気持ちを日本語で表現できるようになることである。そして,日本の生活および日本語に慣れること,また,今後の日本語学習のための基礎作りをすることも大きなねらいとしている。震災の発生に伴い,早稲田大学では,2011年度春学期の授業が1か月遅れて開始された。これにより,授業期間が通常の15週から13週となり,不足する2週分の授業については,補講,レポート,Course N@vi8)による課題提示,Course N@viによるオンデマンド授業等を実施するよう大学要旨川名恭子,他/初級日本語クラスにおける教師間シナジーThe Practice of “Nihongo Kakiko” using Course N@vi特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文川名 恭子・小西 玲子・齋藤 智美・坂田 麗子・佐藤 貴仁 田所 直子・田中 敦子・水上 弘子・宮武かおり・渡部みなほ本稿では,早稲田大学日本語教育研究センターの初級前半クラスで行われた「日本語かきこ」活動における教師の取り組みについて報告する。「日本語かきこ」とは,同大学に設置されている授業支援ポータルサイトCourse N@vi のBBSを用いて学生が書き込みを行い,それを授業でフィードバックする活動である。同大学では初めての試みとなるこの活動は,同じレベルの9クラスにおいて一斉に実施された。開始にあたり各教師で活動に対する考え方や取り組みが異なっていたが,情報交換を機に多様な変化がみられるようになった。実践を振り返り,その変化がどのようにして生まれていったのかを分析した結果,活動を通して行われた教師間の連携がそれぞれの取り組みに大きな影響を与えていたことがわかった。このような相乗作用を本稿では教師間シナジーと呼び,その意義と重要性について述べる。キーワード:初級日本語クラス,BBS, 「日本語かきこ」,教師間の連携,教師間シナジー初級日本語クラスにおける教師間シナジー―Course N@viを活用した「日本語かきこ」の実践―

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