早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●134早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/119-137る窓口の存在は,「柴又」という一つの地域社会だけではない。その他にも様々なメディアが存在する。それらをすべて網羅して紹介することは到底できないが,映画の教材価値という側面から見て,有意義なものをいくつか挙げることにする。まずは,6.1と同様にYahoo! Japan(http://www.yahoo.co.jp)の検索機能を用いて「男はつらいよ」というキーワードで検索したインターネット情報の結果を以下に示す。(2011年11月30日現在)25) a 『男はつらいよ』松竹公式サイトb ウィキペディア フリー百科事典「男はつらいよ」c Hatenaのポータルサイト:はてなキーワード「男はつらいよ」d 「男はつらいよ」映画/作品情報 Yahoo! Japan映画e 「男はつらいよ」goo映画f 「男はつらいよ」(公式ホームページ)Facebookg その他(個人サイトなど)トップに抽出されたのは,映画『男はつらいよ』を製作している松竹株式会社の公式サイトであった。映画の概要や歴史,製作者の様子など様々な方面から充実した映画の紹介を行っており,映画の視聴にともなって有意義な情報を提供している。中でも40周年プロジェクト(2009年8月27日をもって終了)の報告は,「映画の上映会情報」や「寅さん川柳コンテスト」など,学生たちの社会参画の支援契機につながる有益な情報が満載であった。以下に続くbやcは,『男はつらいよ』に関する一般的な情報を集約したページで,映画の概要を知ることができるし,dやeも映画に特化した説明を知ることができる。また,友だちや同僚,同級生,仲間たちと交流を深めることを目的としているFacebookに『男はつらいよ』が登場したことは,日本人学生や外国人学生にとって,この映画を通しての社会参入や参画を支援できる一つの環境が整ったと言えるだろう。寅さんを話題にして,様々な方面との人的交流やコミュニケーションのきっかけが生まれる土壌が『男はつらいよ』にも存在するのである。続けて,Yahoo! Japan(http://www.yahoo.co.jp)の検索機能を用いて,「寅さん」をキーワードに抽出してみると,これまでの「柴又」や『男はつらいよ』で拾われた情報と一部重なったが,新たに「葛飾観光ポータルサイト」内の「寅さん記念館」のサイトや「渥美清寅さんこもろ会館」のような記念館の情報,「文化放送開局60周年特別企画 みんなの寅さん(山田洋次映画監督50周年プロジェクト)」(本稿3.1より再掲),その他これまでの検索にかからなかった個人サイトが抽出できた。このようにインターネットを利用した『男はつらいよ』に関連する情報については大変豊富に揃っており,映画を使用した教室での授業だけでなく,教室を離れたところも含めて学習の契機拡大が期待できる。この他にも『男はつらいよ』に関連する書籍類やDVD作品に関連する情報など様々なメディアを通した『男はつらいよ』情報が確認できる状況であり,映画の学習から拡大する日本社会への社会参入や社会参画を支援でき,学習の幅広い契機を与えることができる。これに関連する研究としては『男はつらいよ』を利用した「日本語マルチメディア教材の開発」について報告している石上・坂谷内・小松(2001)があるが,『男はつらいよ』を対象とした研究の代表的なものであり,映画を利用した教材研究の啓発的研究として評価できるものである。

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