早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●11図3は,4つの日本語学習リソースが,結節点(四角形)を介してお互いに結びついている様子黒田史彦/留学生支援システムの構図図3 支援ネットワーク特集 教室中心主義からの解放/基幹論文リソースや留学生サポートの情報を収集・蓄積しておくだけでは不十分である。各リソース,各サポート間の連携を強化したり,必要のない重複を解消したり,足りない部分を補い合ったりするような調整をリソースやサポートの提供元に働きかける必要がある。あくまで留学生の立場から見て,無理・無駄のない支援ネットワークが形成されることが望ましい。を,簡略的に表している。実際には,無数の学習リソースが相互に直結しており,より目の細かい網目状のネットワークを形成しているはずである。そして,日本語学習リソースと留学生サポートを結んだネット(網)で,問題や疑問を抱えて困っている留学生をすくい上げようと試みる仕組みが,留学生支援システムであるとも言える。2.4.ポータル経由のセルフ・アクセス数多くの日本語学習リソースと留学生サポートから構成される支援ネットワークの総体である留学生支援システムには,留学生が希望する学習リソースや留学生サポートに容易にセルフ・アクセスできるような仕掛けも必要である。つまり,支援ネットワークへの最初のアクセス・ポイントとなり得るポータル(入口)がなくてはならない。ポータルとは,いわば旅行者向けのインフォメーションセンターのようなものである。旅行者は,必要な時にインフォメーションセンターを訪れ,自分が求めている情報を得ることができる。たとえば,旅行者が現代美術を鑑賞したい場合,どのような美術館がどこにあるのか,どんな美術品が展示されているのか,開館時間は何時から何時までか,入場料はいくらか,何か特別なイベントが催されていないか,その美術館に行くにはどの交通機関を使うのが最も便利なのか,一か所だけではなく複数の美術館を訪れた方が有意義なのか,といった有益な情報をまとめて得ることができるのがインフォメーションセンターである。同様に,何らかの支援を求める留学生は,最初にポータルに立ち寄って,自分に利用可能な日本語学習リソースや留学生サポートに関する情報を一括して入手し,今の自分に最も相応しいと思われる学習リソースや留学生サポートを選んで自らアクセスする。図4は,留学生がまずポータル(P)にセルフ・アクセスし,その後,日本語学習リソースと留学生サポートにセルフ・アクセスしている様子(放射状に広がる4つの矢印)を概念的に表してい

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