早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●1191.はじめに:本実践の教育的文脈と本稿の動機寄稿論文教室実践の新展開General teaching material value of the movie and the teaching material value that can support social 本稿は,早稲田大学日本語教育研究センター(以下「日本語センター」)で開講されている「日本語教育教材考:映画『男はつらいよ』の日本語と日本文化」という授業科目における実践の報告である。この授業科目は,全学対象のオープン教育科目1)(開講箇所:日本語センター)に位置づけられているため,受講者は,日本語センター(別科専修課程)所属の外国人留学生だけではなく,他箇所所属の学部生や大学院生なども含まれている。言わば,外国人留学生と日本人学生の混在型授業クラス(中村・園田2004,村松2004)となっている。日本語センターで開講されているオープン教育科目の位置づけの一つには,様々な専門的分野を学んでいる学生に向けて日本語教育学を広く提供することが含まれているが,本授業科目も日本語教育に興味や関心のある学生が履修しているクラスである。こうした授業科目の位置づけと受講者の顔ぶれを踏まえて,本授業科目の担当者である私は,次のような教育的文脈を考慮して,「日本語教育教材考:映画『男はつらいよ』の日本語と日本文化」といった授業科目をデザインした。要旨中山英治/日本語教育における映画の一般的な教材価値と社会参画を支援できる教材価値本稿は,早稲田大学日本語教育研究センターで開講されているオープン教育科目の一つである「日本語教育教材考:映画『男はつらいよ』の日本語と日本文化」に関する実践の報告である。本授業科目は,留学生と日本人学生の混在型クラス,授業カルテを使用した個の学び,教材価値論というテーマの3つの教育的文脈において展開された。教材論や映画を使った実践研究に関する先行研究の整理を踏まえて,本授業科目の主素材である映画『男はつらいよ』の教材価値を受講者の書いた授業カルテや担当者の配布した資料を分析して考察した。その結果,この映画の「言語的な教材価値」,「内容的(非言語的)な教材価値」,「外国人学生の社会参画を支援できる教材価値」を指摘した。教材研究に関して本稿が依拠する理論的背景が従来の教材論ではなく,「教材と学習者」,「教材と日本語教師」,「教材化のプロセス」を統合した教材価値論であることも述べた。キーワード:教材価値論,混在型授業,文化のインデックス化,視読解,社会参画特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文participation in Japanese-language education:Based on the analysis of the Japanese movie ‘Otoko wa Tsurai yo’中山 英治日本語教育における映画の一般的な教材価値と 社会参画を支援できる教材価値―『男はつらいよ』を資料として―

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