早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●102「09春」,「09秋」には,私たちは「イベント企画プロジェクト」において担当者はクラス活動の「09春」には,「イベント企画プロジェクト」の教室は一つのコミュニティであり,学習者がク早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/85-105春」,「09秋」を通して,問題意識の共有,すなわち,クラスのメンバーが留学生が周辺化されていると認識し,それを問題であると意識することが,非常に困難であることが明らかになった。そこで,私たちはどのようにして問題意識を共有させるかという議論をたびたび行った。また,「09秋」を通して,留学生も私たち同様,大学コミュニティにおける留学生の周辺化を問題であると認識しているであろうという前提に疑いが生じた。そして,私たちは,大学コミュニティにおける留学生の周辺化という担当者の問題意識を,学習者にも共有させようしていたことに気づいた。そこで,私たちは,「イベント企画プロジェクト」という実践とはどのような実践かに関し,改めて考え始めた。「10春」において,リピーター学生がクラス活動へ主体的に参加する姿を目の当たりにしたことにより,私たちは,「イベント企画プロジェクト」という実践を,私たちの問題意識が反映されたイベントの企画・開催を意図する活動としてではなく,学習者がイベントを企画・開催するという仕事を協働で主体的に遂行する活動として捉えるようになった。「10春」以降も,引き続き,「イベント企画プロジェクト」という実践を,学習者がイベントを企画・開催するという仕事を協働で主体的に遂行する活動として捉えている。2)「イベント企画プロジェクト」の教室観の変容ラス活動を通してコミュニティの形成とコミュニティへの参加を経験する場と捉えていた。「09秋」も「09春」に引き続き,「イベント企画プロジェクト」の教室をコミュニティと捉えていたが,新たに時間的な広がりを持ち,空間的に拡張する可能性を持つコミュニティと捉えるという着想を得た。「10春」には,リピーター学生がクラス活動に主体的に参加したことにより,「イベント企画プロジェクト」の教室は,学期ごとに区切られたコミュニティではなく,時間的な広がりを持ったコミュニティであるという確信を得た。また,「10春」に始めたICCとの連携を通して,私たちは,「イベント企画プロジェクト」の教室を固定的で閉じられたコミュニティではなく,他の様々なコミュニティとつながることにより,空間的に拡張する可能性を持つコミュニティであるという確信を得た。「10春」以降も,引き続き,「イベント企画プロジェクト」の教室を時間的な広がりを持ち,空間的に拡張する可能性を持つコミュニティと捉えている。3)「イベント企画プロジェクト」における教師観の変容見守り役であると捉えていた。その一方で,環境整備,注意・確認・アドバイス,クラス活動の方向づけ,軌道修正,問題解消を行う役割を担う存在であるとも捉えていた。しかし,担当者がそうした役割を担うことは,学習者が協働で問題を乗り越えながら主体的にクラス活動に参加することを阻むことにつながりかねない。私たちは,クラス活動の見守り役という役割と,環境整備,注意・確認・アドバイス,クラス活動の方向づけ,軌道修正,問題解消を行う役割という互いに相反する役割を同時に担うことに矛盾を感じるようなった。「10春」において,私たちは,リピーター学生の主体的な参加を目の当たりにした。これにより,「09春」,「09秋」に私たちが抱いていたクラス活動の見守り役に徹することへの迷いは,徐々に薄れ,クラス活動の見守り役に徹することに確信が持てるようになった。また,それに伴い,私たちは,企画内容に対する注意・確認・アドバイスを行うという役割を担うようになった。反対に,クラス活動の方向づけ,軌道修正,問題解消を行う役割は,徐々に後退していった。「10春」以降も,引き続き,担当者はクラス活動の見守り役に徹しつつ,状況に応じて注意・確認・アドバイスを行う役割を担う存在であると捉えている。更に,

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