早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●101「11春」においても,「10春」,「10秋」同様,企画内容に対する注意・確認・アドバイスを行うと「09春」には,私たちは,「イベント企画プロジェクト」という実践を,大学コミュニティにお5.まとめと考察4-5-4.2011年度春学期「イベント企画プロジェクト」における教師観の変容私たちは,「11春」も,「10春」,「10秋」同様,基本的にクラス活動の見守り役に徹した。また,いう役割を担った。「11春」には,次のような企画内容に対する注意を検討し,実施した。4–4–4で述べたように,私たちは,「10秋」にも当該のイベント企画が内包する危険性に関して,指摘するか否かを検討した。しかし,検討したものの,実際には行わなかった。「11春」には,危険性を内包するようなイベント企画が進行しそうになったことから,私たちは,危険を未然に防ぐため,イベントの安全を確保するための指摘を行った。4–5–3で述べたように,私たちは,「11春」開始前にFacebook上に「イベント企画プロジェクトOP会」というグループを開設した。「イベント企画プロジェクトOP会」の開設は,過去に「イベント企画プロジェクト」に関わっていた人々と現在「イベント企画プロジェクト」に関わっている人々をつなげることを意図していた。また,「10春」から行うようになったICCとの連携は,もともと学習者に外に開かれたイベントの企画・開催をイメージしてもらうことを目的として始まった。つまり,ICCとの連携には,「09春」,「09秋」における問題点を改善するという意図があった。しかし,連携を継続する中で,私たちは,徐々に「イベント企画プロジェクト」というコミュニティを他のコミュニティとつなぐという動きの一環であると意味づけるようになった。以上のような動きを通して,私たちは,「イベント企画プロジェクト」の教室というコミュニティの時間的な広がりや空間的な拡張を促すこともまた,担当者の役割であると捉えるようになった。以上,「イベント企画プロジェクト」の実践観,及び教室観,「イベント企画プロジェクト」における教師観の変容を5学期にわたり記述した。私たちの実践観・教室観・教師観の変容は,以下のようにまとめられる。1)「イベント企画プロジェクト」の実践観の変容いて留学生が周辺化されているという問題意識に基づき,留学生の問題を解決するための討論会を開催することを目的とする場と捉えていた。そして,その目的を実現するためには,クラスのメンバーが,留学生が周辺化されているという問題意識を共有する必要があると考えていた。「09秋」に,「イベント企画プロジェクト」の目的は,留学生の問題を解決するための討論会の開催からイベントの企画・開催へと転換した。その一方で,私たちは「09春」同様,留学生が周辺化されているという問題意識をクラスのメンバーが共有することが必要であると考えていた。しかし,「09古屋憲章,他/クラス担当者の実践観,教室観,教師観はどのように変容したか1.現在,構想されているイベントには,次のようなリスクがあることを伝える。①食品提供→食中毒,②食品調理→火事,③スポーツ→怪我・許可:①②③いずれも,行うにあたり,施設の許可を得る必要があるため,場所の確保が難しくなる。→ みなさんは,友達と遊びに行くわけではなく,不特定多数の人が参加するイベント主催者という責任ある立場にある。2. タイトル,テーマ,メッセージがあいまいなまま,イベント内容に関する議論が進んでいるようなので,タイトル,テーマ,メッセージの明確化を求める。(110602 授業記録_ミーティング)特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文

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