早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●100「11春」には,時間的な広がりを持ち,空間的に拡張する可能性を持つコミュニティとしての教早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/85-105ゼンテーションという流れで進行した。「11春」は,クラスのメンバーが少なく,イベント企画グループが二つしか編成されなかったためか,いずれかのイベント企画を選択するのでなく,二つのイベント企画を融合させることになった。その後,クラスのメンバー全員で話し合いを進めた結果,「国際夏祭り」というイベント企画が決定した。少人数であったためか,前学期までとは異なり,役割班の編成は行われなかった。クラスのメンバー全員で話し合い,具体的な作業が発生した際,誰かが当該の作業を担うという手順でイベントの企画,及び準備が進められた。その過程で,「友達を作ろう」というイベントテーマが決定した。7月15日に行われたイベント,「国際夏祭り」には,クラス外の日本人学生,留学生等,延べ50名近くの参加があった。イベントは,チーム分け→各種ゲームの実施→結果発表,表彰式という流れで行われた。4-5-2.2011年度春学期「イベント企画プロジェクト」の実践観の変容「11春」も「10秋」と同様,リピーター学生はいなかった。しかし,クラスのメンバーが少なく,関係が作りやすかったということもあってか,学習者はクラス開始当初から主体的にイベント企画に取り組んだ。そのため,私たちも,「10春」,「10秋」同様,終始確信を持って,「イベント企画プロジェクト」という実践を,学習者がイベントを企画・開催するという仕事を協働で主体的に遂行する活動であると捉えていた。4-5-3.2011年度春学期「イベント企画プロジェクト」の教室観の変容室という観点から見て,特筆すべき二つの動きがあった。一つは,Facebookの活用である。私たちは,「11春」開始前にFacebook上に「イベント企画プロジェクトOP会」というグループを開設し,これまでに「イベント企画プロジェクト」を履修した学習者,及び関わりのあった人たち(ICC学生スタッフ,ボランティア等)を可能な限りメンバーとして登録した。Facebook内に「イベント企画プロジェクトOP会」というグループを開設したことにより,過去に「イベント企画プロジェクト」に関わっていた人々と現在「イベント企画プロジェクト」に関わっている人々のつながり,すなわち,学期を越えたつながりが可視化されることになった。また,当該学期のクラスのメンバーと過去のクラスのメンバーが,直接コンタクトを取ることも容易になった。現在までのところ,当該学期のクラスのメンバーと過去のクラスのメンバーの間で活発な交流が行われているとは言い難い。しかし,例えば,「イベント企画プロジェクトOP会」のウォールに掲載されたイベント情報を見て,過去のクラスのメンバーがイベントに参加するなど,ゆるやかなつながりの場となっている。もう一つは,イベント参加者がイベント企画者になるという動きである。「11春」のクラスのメンバーのうち2名が「10秋」に行われたイベント「国際貿易ゲーム」に参加していた。彼らは,「国際貿易ゲーム」に参加したところ,とても楽しかったので,今度は自分が企画する側になってみたいと思い,履修したとのことであった。私たちは,「10春」以降,確信を持って,「イベント企画プロジェクト」の教室を時間的な広がりを持ち,空間的に拡張する可能性を持つコミュニティであると捉えるようになった。上述した二つの動きから,私たちは,そうしたコミュニティが徐々に形成されつつあることを強く実感した。

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