早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●99「10秋」に行なわれたイベント企画のプレゼンテーションにおいて,「冬の大運動会」というイ4-4-3.2010年度秋学期「イベント企画プロジェクト」の教室観の変容学期開始当初,担当者が「10春」のクラスのメンバーに向け,自分たちがどのようにイベントを企画し,開催したかを説明に来てほしいと依頼したところ,「09秋」,「10春」の履修者であるパクさん(仮名)が説明に来てくれた。パクさんの説明を聞き,私たちは次のような感想を抱いた。パクさんという「10春」のクラスのメンバーが,イベント企画経験の伝授を媒介として,「10秋」のクラスのメンバーとつながったことにより,私たちは,「イベント企画プロジェクト」の教室を,確信を持って時間的な広がりを持ったコミュニティであると捉えるようになった。また,「10秋」にも「10春」と同様,ICCの学生スタッフにイベント企画に関するレクチャーやイベントの広報への協力等を依頼した。ICCとの連携が継続したことにより,私たちは,「イベント企画プロジェクト」の教室を,確信を持って他の様々なコミュニティとつながり,空間的に拡張する可能性を持つコミュニティであると捉えるようになった。4-4-4.2010年度秋学期「イベント企画プロジェクト」における教師観の変容私たちは,「10秋」も,「10春」同様,基本的にクラス活動の見守り役に徹するとともに,主に企画内容に対する注意・確認・アドバイスを行うという役割を担った。「10秋」には,次のような企画内容に対する注意が検討されたことがあった。ベント企画が提案された。その際,私たちは次のように考えた。運動会をイベントとして行った場合,怪我人が発生する危険性がある。私たちは,危険を未然に防ぐために,担当者がイベントの安全を確保するための指摘を行う役割を担うべきではないか。そこで,私たちは,当該のイベント企画が内包する危険性に関し,学習者に指摘するか否かを検討した。結局,「10秋」に行うイベントが「国際貿易ゲーム」に決定したため,企画内容に対する注意は検討したのみで,実際には行わなかった。4-5.2011年度春学期「イベント企画プロジェクト」(以下「11春」)4-5-1.実践概要■期間:2011年5月12日〜8月4日(週1コマ=90分×13週8))■クラス参加者:学習者6名,日本人学生ボランティア1名,担当者1名,TA1名■クラス活動の流れ:クラス活動初期には,「10春」,「10秋」と同様,名前覚え→企画グループの編成→ICCの学生スタッフによるイベント企画の手順に関するレクチャー→企画グループごとに企画案の検討→プレ古屋憲章,他/クラス担当者の実践観,教室観,教師観はどのように変容したかパクさんの説明がすばらしかった。担当者が伝えたいような内容を漏らさず話していた。おそらく同じ内容を担当者が話しても,学生にあまり響かないのではないか。同じ学生の先輩が自分の経験を交えて話すことに意味があったと思う。(101007 授業記録_ミーティング)次回の「イベント企画決定」において,担当者は,どのような企画に決定したとしても,基本的に介入せず,傍観する。ただし,「冬の大運動会」に決定した場合は,その場でセンター事務所に授業内の活動として「運動会」を実施することが可能か否かを問い合わせる。実施が不可能である場合は,その旨学生に伝える。(101104 授業記録_ミーティング)特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文

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